先日NHKの「ためしてガッテン」でアトピー性皮膚炎に梔子柏皮湯、白虎加人参湯、十味敗毒湯が有効であるという放送があり、私の店にも放送後多くの問い合わせがありました。リンパ球の変化を見て漢方薬がアレルギーの体質を改善するということを科学的に証明したことは評価できますが、複雑な病態をもつアトピー患者には上記のような単純な漢方薬だけではあまり効果は期待できないと思います。皮膚の症状と全身症状よりきちんと漢方医学による診断を行い、正しく漢方薬を選択することが大切です。
ところでアトピー性皮膚炎は中国ではあまり見られないようで、日本における経験が治療において重要な意味を持ちます。いろいろな漢方家が治療法を発表していますが、アレルギー体質の改善という観点からみると、日本で独自に発展した一貫堂医学の治療法は効果的です。一貫堂医学ではアレルギー物質が体内で何らかの毒(熱)になり、気血の流れを乱して発病すると考えています。そして患者の体質を1.解毒証体質2.臓毒証体質3.淤血証体質の3つのタイプに分けています。さらに小児期、青年期、壮年期の各年代別に分けて主に柴胡清肝湯、荊芥連翹湯、竜胆瀉肝湯、防風通聖散、通導散の5つの処方を自在に組み合わせて排毒を主とした治療するとされています。実際の治療では一貫堂医学と中国医学を融合させて体質診断を行い、上記の5処方に様々な漢方薬を組み合わせると大変良い効果があります。
西洋医学ではアトピー性皮膚炎は皮膚の病気としてステロイドなどの外用剤で治療することが多いですが、慢性に経過すると効果がないばかりか副作用が出ることもあります。アトピー性皮膚炎やアレルギー疾患は体質の異常による病気と考えて、正しい食生活と上記のような漢方治療による体質改善を行うことをお薦めします。
掲載:マイドゥー 2003年10月号