去る11月3日〜11月6日にかけて台湾研修に行ってきました。今回の研修の目的は勝昌製薬の工場見学と直営診療所の見学、迪化街の見学などです。
勝昌製薬は現在台湾の漢方メーカーの最大手の一つで、製品の品質はNo.1といわれています。東洋薬行というメーカーが日本で輸入販売しています。私の店では3〜4年前より使い始め、現在では主力製品になっています。実際に使ってみると、他のメーカーの漢方製剤よりも大変良く効きます。今回の訪問でその効果の秘密を確かめることが第一の目的でした。
勝昌製薬の工場を実際見ると、原料の輸入、検査、保存、炮製を自社工場で一括管理して行っており、世界基準のGMPもクリアしていました。現在は新GMPに対応するため、さらに改良を重ねているということです。しかし、それだけでは日本のメーカーと大差がありません。効果の秘密は原料となる生薬の品質と加工にありました。
勝昌工場(1) | 勝昌工場(2) |
原料となる生薬は「地道薬材」という原則に従い、最高品質が得られるという地域の生薬のみを取り扱っています。さらに最新の検査機械で成分をチェックし、1級品でも成分検査で不合格になると返品する契約になっているそうです。生薬の不良品を返品できる契約は日本、中国のメーカーではほとんど見られないそうですが、勝昌製薬の長年の生薬鑑定技術と信頼がこのようなシステムを可能にしているということです。
さらに生薬を「炮製」という伝統的な方法で加工しています。現在「炮製」を行っているメーカーは日本、中国でもほとんど見られませんが、勝昌製薬の幹部によると、炮製の方法で明らかに効果が良くなるといいます。
勝昌工場の炮製写真(1) | 勝昌工場の炮製写真(2) |
工場見学が終わってから勝昌製薬の直営診療所を見学しました。台湾では1995年から健康保険が始まり、最初から漢方薬の保険適応が認められています。保険制度で使える漢方薬はエキス製剤と生薬エキスのみで、煎じ薬は認められていないそうです。しかし、勝昌製薬などが作っているエキス製剤は伝統的な製法で品質が良く、日本に輸入されていない優れた製品もたくさんありました。また単味の生薬エキスは350種類以上もあり、それを自由に組み合わせて治療することができます。
勝昌製薬の直営診療所は健康保険による診療を行っていましたが、勝昌のエキス製剤と生薬エキスを患者さんの体質に合わせて自由に組み合わせて、よい効果を上げているようでした。このような方法は日本でも応用しやすく、参考になることが多くありました。
勝昌診療所の写真(1) | 勝昌診療所の写真(2) |
勝昌診療所の写真(3) |
工場と直営診療所の見学が終わってから迪化街を見学しました。迪化街は台北で最も古く、由緒正しい問屋街です。台湾一の漢方薬、乾物、布問屋街として、季節を問わずにぎわう毎日で、特に旧正月前には年越し用品を求める人たちで足の踏み場も無いほどになるそうです。面白いことに迪化街の乾物屋には漢方薬の原料が食品として並べられています。もともと「医食同源」といわれるように漢方薬と食品は同じ源から出来ています。薬効が高いものは漢方薬となり、日常の滋養に良いものは食品になりました。ですから、漢方薬でありながら食品でもあるものは数多くあります。台湾人はこのことをよく理解しており、風邪を引いたときや冬至などには、漢方粥を食べる習慣が普通に行われているそうです。ですから乾物屋に漢方薬の原料が並べられており、良く売れているわけです。このような習慣は核家族化が進む中国の大都市では忘れられているようです。
迪化街の写真(1) | 迪化街の写真(2) |
今回の台湾旅行で感じたことは、勝昌の幹部、迪化街の薬局、通訳など会う方皆さんが日本を良く知っていることでした。台湾は親日の方が多いと聞いていましたが、本当にその通りでした。台北の町並みや人々は、高度成長の頃の昭和の日本を思い起こさせます。
台湾には中国以上に伝統を守り、現在の日本でも失われた技術が残っていることがわかり、大変感動する研修となりました。
さてうれしいニュースですが、私の店で10年以上にわたり漢方相談会を行っているおなじみの寇華勝先生が、中国最高峰の「北京・中国中医研究院」の客員教授になりました。今年の10月からは寇華勝先生の奥様で、中医師の林建豫先生も毎週水曜に漢方相談を行っています。お二人ともすばらしい学識と経験を持っており、当店は難病にも対応できる体制になっています。
中医学の理論と実践は、発祥の地である中国に一日の長があります。当店は中国の理論と実践を学び、日本人の体質を考慮してアレンジして、さらに台湾で作られた最高品質の漢方製剤も取り入れています。もちろん中成薬(中国輸入薬)、日本の漢方製剤や健康食品も幅広く取り入れ、どのような相談にも対応できる体制を整えていますので、ご安心してご相談ください。
掲載:マイドゥー 2006年1月号