今回は慢性頭痛の漢方治療についてお話します。「頭痛」は日本人の4人に1人が悩んでいると言われていますが、恐らくはもっとたくさんの人が悩んでいると思われます。脳血管障害や脳腫瘍、高血圧などの病気による頭痛を除けば、日常生活で起こりやすい慢性の頭痛は「緊張型頭痛」「片頭痛」「群発頭痛」に分けられます。
緊張型頭痛は、もっとも頻度の高い頭痛で、慢性的なストレスや長時間のデスクワークなどによる首や肩の筋肉の緊張で起こります。特徴としては、後頭部から頭全体が締めつけられるような、重苦しい痛みがあります。
片頭痛は、脳のなかや周辺にある血管が、初め収縮したあと、過度に拡張するためにおこる血管性の頭痛です。頭の片側、あるいは両側に突然、脈打つような痛みがおそいます。若い女性に多いようです。
群発頭痛は、頭痛が、いったん起こり始めると1〜2ヵ月間の間、連日のように群発するのが特徴です。痛みは眼の奥やその周辺を中心から始まり、額、こめかみ、あごなどに広がります。20〜30歳代の男性に多いようです。
群発頭痛は頻度が低いので、一般に「頭痛持ち」の方は、緊張型頭痛と片頭痛になります。いずれも肩や首のこりを伴いますので、区別がつきにくいこともあります。
頭痛持ちの方は、痛み止めなどを飲んでその場をしのぎますが、根本的な解決にはなっていないようです。漢方医学では、老廃物といえる邪気が滞っている「実証」と気血などの栄養が不足している「虚証」に分けて、頭痛がおきにくい体質に改善することを重視します。
淤血の頭痛は、痛みが固定していて、刺すような痛みが特徴です。肩こりを伴うことが多く見られます。冠元顆粒(かんげんかりゅう)、血府逐淤丸(けっぷちくおがん)、水快宝(すいかいほう)などが効果的です。
痰湿の頭痛は、濡れた帽子で締めつけられるような痛みで、低気圧が近づくと悪化することが特徴です。半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)、温胆湯(うんたんとう)などが効果的です。
そのほかに実証の頭痛として、ストレスやイライラで悪化する肝陽頭痛があります。柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)などが効果的です。
一方虚証の頭痛は、貧血、低血圧、虚弱体質の方に多く見られます。血虚頭痛、肝腎虚頭痛などがよく見られ、婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)、海馬補腎丸(かいまほじんがん)などを体質に合わせて使い分けます。
体質に合わせた漢方薬を服用すると、長年の頑固な頭痛も、いつの間にか忘れることができます。
掲載:マイドゥー 2006年6月号