今回は、肥満、高血圧、高脂血症、高血糖というメタボリックシンドロームの疾患のうち、高血糖についてお話します。
糖尿病は世界的に増えており、先進国では人口の五%もの患者がいると推定されています。日本でも予備軍を含めれば、国民の十人に一人に当たる千四百万人近くに達すると言われています。日本人は欧米人にくらべ、体質的に糖尿病になりやすいといわれていますが、それ以上に食事の欧米化や運動不足、 そしてストレスの強い社会環境が背景となっているようです。
糖尿病はインスリンというホルモンの働きが不足するために、血液中にブドウ糖があふれかえる病気です。インスリンの作用が不足するのには、1.インスリンの分泌量が減ること、2.インスリンに対する細胞の感受性が悪くなること、という二つの理由があります。メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満によりインスリンの感受性が低下している2の状態なので、メタボリックシンドロームは糖尿病の原因のひとつといえます。
糖尿病の典型的な症状は、口渇、多飲、多尿、体重減少などが知られていますが、実は大多数の方はほとんど無症状です。検診で血糖値が高く糖尿病を強く疑われる状態でも、自覚症状があまりないため、およそ半数の方が治療を受けていないと言われています。しかし症状が出なくても、糖尿病は徐々に進行し恐ろしい合併症をひきおこします。糖尿病の本当の怖さは、この合併症にあります。
糖尿病は典型的な生活習慣病ですので、食生活を改善し、肥満を防ぎ、予防することが大切です。生活習慣の改善が根本治療になりますが、なかなか乱れた生活習慣を治すことは難しいようです。血糖を下げる薬は効果は早いのですが、血糖値を下げているに過ぎません。血糖値が下がったことに安心して生活習慣の改善という根本治療を怠ると、糖尿病性腎証、糖尿病性神経障害(しびれ、壊疽など)、糖尿病性網膜症などの合併症が発症します。血液が砂糖水のような状態ですから、血管がもろくなり動脈硬化が進行して、脳や心臓の病気にもなりやすくなります。
私の店では漢方薬を処方して糖尿病の進行を防止しますが、それ以上に食養生を大切にしています。食養生としてはマクロビオティックを中心に薬膳の知恵を加えています。食養生を行うことで、血液の浄化や腸の滞留便の防止を行うことができます。食養生の基本ができていると、漢方薬も良く効くので、まさに一石二鳥といえます。
次回は糖尿病の漢方治療について具体的にお話します。
掲載:マイドゥー 2007年5月号