今回は糖尿病について解説します。糖尿病は世界的に増えており、先進国では人口の五%もの患者がいると推定されています。日本では備軍を含めれば、国民の十人に一人に当たる千四百万人近くに達すると言われています。日本人は欧米人にくらべ、体質的に糖尿病になりやすいといわれていますが、それ以上に食事の欧米化や運動不足、 そしてストレスの強い社会環境が背景となっているようです。
掌紋医学では、主に生命線、放縦線、手のひらの色を診て判断します。[図1]は糖尿病の方によく見られる掌紋です。
[図1]
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★1cm以上の放縦線が2本〜数本ある。
★生命線の起点が高く、生命線内側の面積(交感神経区)が大きい。同時に生命線内側の肉厚が厚い。
★手指の先が全体的に赤っぽい。
★手掌が全体的に肉厚で赤っぽい。
現在の糖尿病は食生活の乱れや肥満が原因ですので、血糖値に一喜一憂するのではなく生活習慣の改善と体質の改善が大切です。糖尿病は初期、中期、末期で症状や体質が変わってきます。そこで、漢方医学では体質別に漢方薬を使い分けます。糖尿病でよく見られるのは、以下の5つのタイプです。
胃腸積熱型は糖尿病の初期〜中期で、油脂類や甘いものなどを多く食べ、内臓脂肪が溜まっている方に多く見られます。防風通聖散や大柴胡湯、温胆湯などが効果的です。
気陰両虚型は体力低下が見られ、疲れやすく胃腸が弱い方に多く見られます。麦味参顆粒などが効果的です。
肝腎陰虚型は糖尿病の中期以降で、少し痩せてきて、目のかすみや乾きがある方に多く見られます。杞菊地黄丸や瀉火補腎丸などが効果的です。
陰陽両虚型は糖尿病の中期〜末期で、痩せてきて体力が低下し、夜尿や頻尿などがある方に多く見られます。八味地黄丸や参馬補腎丸などが効果的です。
気滞淤血型は糖尿病の初期〜末期まで常に見られます。糖尿病は血中に糖分が多いため、血液粘度が高く血液ドロドロの状態といえます。冠元顆粒や松寿仙、桃核承気湯、水快宝などが効果的です。
なお、糖尿病は血液の汚れ(淤血体質)がベースにある方が多いので、冠元顆粒や松寿仙などの淤血を改善して血液をサラサラにする漢方薬を常に併用すると、合併症の予防に良い効果が得られます。
体質や原因に合わせて漢方薬を服用すると、血糖を安定させ、将来の合併症を予防することができます。
掲載:マイドゥー 2010年8月号