今回は「冷え」の4つのタイプ(陽気不足・血虚受寒・気滞淤血・水湿内停)のうち、最後の水湿内停(すいしつないてい)についてお話します。
漢方医学の「水」は、全身を潤す体液を総称したもので、肺・脾胃・腎の働きで全身を巡り、五臓六腑や皮膚など全身を潤します。
よって、肺・脾胃・腎に働きが低下すると、水湿代謝が悪くなり、浮腫みやすくなります。水湿が停滞する体質の方は、痩せている方よりも太っている方に多く見られます。色白で体質が弱く、冷え性で水太りという方が多いようです。
さて、肺・脾胃・腎の働きが低下する原因は、「冷え」や「過労」です。冷えや過労がひどくなると、「気」の働きが低下します。気の働きが低下すると、呼吸機能、消化機能、泌尿器機能が低下しますので、肺・脾胃・腎の働きが悪くなるわけです。
水は全身至る所にありますので、このような状態が長く続くと、浮腫みだけでなく、胃内停水、吐き気、めまい、頭重感、慢性の咳、喀痰、慢性鼻炎、花粉症、頻尿、関節の腫れなどの症状が現れます。「水」は陰性で冷たいものなので、水湿の停滞が続くと冷え性が悪化して、悪循環を繰り返すことになります。ですから体を温めて、肺・脾胃・腎の働きを良くして、体内に停滞した水湿を排泄する必要があります。
水湿内停の方は臓腑との関係をみて、漢方薬を決定します。
肺系が弱い方は、慢性の咳、喀痰、慢性鼻炎、花粉症などが表れやすくなります。肺気を補い水湿代謝を良くする「小青竜湯」「平喘顆粒」「衛益顆粒」などが効果的です。
脾胃系が弱い方は、胃内停水、吐き気、めまい、頭重感などが現れやすくなります。脾胃を丈夫にして水湿代謝を良くする「勝湿顆粒」「半夏白朮天麻湯」 「六君子湯」「苓桂朮甘湯」などが効果的です。
腎系が弱い方は、浮腫み、頻尿、関節の腫れなどが現れやすくなります。腎を温めて水湿代謝を良くする「真武湯」「牛車腎気丸」「八味地黄丸」などが効果的です。
「水湿内停」の方は、白砂糖の甘味、乳製品、揚げ物、南国の食べ物、コーヒー、ビールなどの陰性食を取ることは避けるようにしましょう。
玄米・雑穀などの未精白の穀物を主食にして、根菜類、煮物、海藻類、きのこ、味噌汁を摂るようにしましょう。飲み物としては、玄米茶、ハトムギ茶などがお勧めです。
掲載:マイドゥー 2008年7月号