皆さんご存知のように、老化すると体の水分が減って、皮膚はしわやしみが増え、目は乾燥してきます。それだけでなく、様々な臓器が潤いと栄養を失い、記憶力の低下、更年期障害、歯槽膿漏、骨粗鬆症、耳鳴り、脱毛、白髪などの老化現象が見られるようになります。
体を潤し老化を防ぐためには、陰性で体を冷やす「水」を大量に飲んでも効果はなく(むしろ逆効果になることも多い)、「補腎薬」が効果的であることを前回お話しました。
漢方医学では、腎は排尿、生殖器、骨(歯)、骨髄、脳、耳、髪と関係が深いと考えています。ですから、腎を補うことで様々な老化現象を防止できるわけです。
さて、腎には「腎精」が蓄えられており、「腎陰」と「腎陽」があると考えています。「腎精」は人体にとってもっとも大切な生命力の源で、血液や元気の元となり、生殖や発育成長に大切な物質と考えています。
そして「腎精」の基礎の上に、人体を潤しホルモン様作用を持つ「腎陰」と人体を温め生命活動を活発にする「腎陽」が効果を発揮すると考えています。
お風呂で例えるなら、「腎陰」は水で、「腎陽」は火力です。「腎陰」が衰えると、お風呂でいえば水が減少するので、水分が皮膚や臓器を潤すことができなくなり、様々な老化現象が現れます。一方、「腎陽」が衰えると、お風呂でいえば火力が減少するので、新陳代謝が低下して全身に水を行き渡らせることができなくなり、やはり様々な老化現象が現れます。
上記のように、腎の衰えによる老化現象は「腎陰虚」と「腎陽虚」があるので、体質によって「腎陰」を補う補腎薬と「腎陽」を補う補腎薬を使い分けます。
「腎陰」を補う補腎薬としては、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)、瀉火補腎丸(しゃかほじんがん)、八仙丸(はっせんがん)、天王補心丹(てんのうほしんたん)などがあります。
「腎陽」を補う補腎薬としては、八味地黄丸(はちみじおうがん)、参馬補腎丸(じんばほじんがん)、参茸補血丸(さんじょうほけつがん)、海精宝(かいせいほう)などがあります。
老化が進行すると、「腎陰」「腎陽」ともに衰える「陰陽両虚」になることもあり、そのような方は腎陰を補う漢方薬と腎陽を補う漢方薬を併用します。
体質にあった補腎薬を長く服用すると、体の「保水力」が高まり、アンチエイジングに最適です。
アンチエイジングというと、ビタミンやサプリメントをイメージする方が多いようですが、その効力は「補腎薬」の足元にも及びません。
いつまでも若々しく元気でいるために、ぜひ体質にあった「補腎薬」をお試しください。
掲載:マイドゥー 2008年10月号