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漢方家冥利のお話

 今回は漢方治療を行って本当に良かったといえるお客様の話です。N君は平成11年4月にU薬局さんのご紹介でアトピー性皮膚炎の治療で来店しました。比較的重度のアトピーで、全身が赤褐色で皮膚が厚くなっており(苔鮮化といいます)、痒みがひどく体中に掻爬痕が見られました。私の店に来る前は埼玉の大学の学生さんでしたが、大学4年生のときにアトピーがひどくなったそうです。埼玉のU薬局さんの煎じ薬を服用して症状が和らぎ、無事卒業して静岡に戻ってきました。大学生の頃は痒みで十分な勉強ができなかったそうで、沼津の専門学校に再入学したというまじめな学生さんでした。最初は症状がひどかったので、炎症や痒みを抑える薬草を中心に調合しました。皮膚の炎症が改善してからは、皮膚の色素沈着や苔鮮化を改善する漢方薬に切り替えていきました。N君はまじめに煎じて服用したので、専門学校を卒業する平成13年頃には皮膚の状態はかなり改善していました。卒業後コンピューターの会社に就職しましたが、毎日パソコンを扱い、残業も多く体力をだいぶ消耗しました。そこで補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を中心とした、体力を強めて良い皮膚を作る漢方薬を調合して、2年半ほど服用しました。体力もついて皮膚の状況も改善して、自然に休薬に持っていくことができました。

 漢方薬を休薬した後も律儀なN君からは年賀状などのお頼りはもらっていましたが、今年になってN君より結婚式に参加してほしいという電話がありました。3月吉日に人前結婚式と披露宴に親族扱いで参加させていただきましたが、人前結婚式の参加者は両家の親族ほかには私とU薬局のU先生だけでした。U先生も25年間漢方相談を行ってきて、お客様の結婚式に列席するのは始めての機会だったそうです。結婚式でのN君の肌はつやつやしていて、普通の人よりもきれいなくらいでした。ご両親にも感謝されて、本当に漢方家冥利に尽きると思いました。

 結婚披露宴で知ったのですが、学生時代からのアトピー治療は心優しい新婦の支えがあったということでした。漢方薬で体質改善をして、食生活にも気をつけ、支えてくれる人がいれば、重いアトピーでも完全に克服できるということを若い2人に教えられました。

掲載:マイドゥー 2005年5月号