成人の2人に1人はがんになる時代になりました。様々な治療法や健康食品がマスコミに取り上げられますが、がんで亡くなる人が減ったという話は聞きません。がんで亡くなる人は増えつづけていますが、一方でがんが完治して社会復帰した人もたくさんいます。毎日店頭で漢方相談をしていると、漢方薬や健康食品のがんに対する効果について多くの誤解があることを実感します。漢方薬や健康食品は正しく使えばがんに対して一定の効果が期待できます。以下の正しい知識の基に積極的に漢方薬や健康食品を服用してほしいと思います。
がんは昭和56年以降死亡原因の第1位となって以来一貫して増えつづけています。平成8年には死亡数の30%をこえて3人に1人はがんで死亡する状況になってきました。西洋医学はこの間進歩を続け、がん検診や様々な治療法が考えられてきましたが、人体の自然治癒力を無視して、がんのみを治そうとする西洋医学的手法に多くの問題があることは明らかになってきています。
がん細胞は無制限に細胞分裂を起こして増殖しますが、がんの芽ができてから臨床的にがんが見つかるまでは通常は数年から数十年の月日を要します。
がん細胞を栄養状態の良い試験管で培養すると1個のがん細胞が1グラムまで増えるのに1ヶ月~数ヶ月の期間ですむといわれています。しかし体内ではがん細胞にとって酸素や栄養の供給が不十分になりやすく、免疫細胞の攻撃も受けるため極めてゆっくり成長します。がんの性質にもよりますが体内において1個のがん細胞が1グラムまで増えるのに8年~10年かかるといわれております。1グラムのがんは直径1cmにあたり、いわゆる検査で発見される極めて初期のがんといわれております。つまり初期がんといわれるものはじつはがんの芽ができてから8年以上経っている年代物のがんであり、がんとは超慢性病ということができます。がんの大きさが2kg近くなると生体の維持が困難になるといわれていますが、一部の特殊ながんを除けばがん細胞は急に大きくなるわけではないので、がんが見つかってもあわてるのではなく最善の方法をじっくり考えることが大切です。
通常の細胞は細胞分裂を繰り返すとテロメアによって自然に分裂できなくなります。(細胞のアポトーシス)ところがガン細胞はテロメラーゼを持っており、テロメアを修復して無制限に増殖する不死細胞となります。
がん細胞にはがん抗原とHLA抗原が存在しており、生体の免疫細胞に異常細胞と認識され攻撃を受けて殺傷されます。しかしがん細胞は自分を守るためにHLA抗原を隠す性質があり、HLA抗原を隠したがん細胞は免疫細胞の監視を逃れて増殖していきます。
ガン細胞は自身が栄養を取るために絨毛血管のような血管を新生します。この血管ができなければがん細胞は栄養を取ることができず死滅してしまいます。
がん細胞は酸性抗原タンパク、PGE2、TGF-βなどを産生して免疫細胞を抑制します。また毒素を産生して食欲を低下、衰弱、悪液質を引き起こします。
転移はまずがん細胞が足場としている基底膜を破り周囲の組織に浸潤することから始まります。浸潤したがん細胞は血液やリンパ液の流れに乗って他の臓器に付着すると転移になりますが、がん細胞はその途中で免疫細胞に攻撃されることなどにより多くは死滅してしまいます。通常新たな臓器にたどり着くがん細胞は1万個に1個といわれています。 しかし免疫が低下しているとがん細胞を攻撃する力が弱まり転移の危険性が高まります。また血液が高凝血状態にあると、がん細胞は血小板などとくっついて他の臓器に付着しやすくなり転移の危険性が高まります。
* がん細胞は無限に増殖して、他の組織に転移するため悪性腫瘍と言われています。もしある大きさで増殖が止まり転移をしなければ、良性腫瘍(ポリープ)と同じです。漢方総合療法はいろいろな角度からのアプローチでがん細胞を休眠させて、増殖と転移を抑え、できれば縮小することを目的としています。
「がんの患者研究所」の川竹文夫氏によるとがんは結果で原因はライフスタイル、食事、心にあるといっています。
氷山にたとえると、海の上に浮かんでいるがんはあくまで結果で海の下にあるライフスタイル、食事、心という原因を改善することが大切です。ライフスタイルの中で大切なことは睡眠不足にならないことです。食事では高カロリー、高脂肪、高動物性タンパク、高白砂糖の4つの高を避けて、玄米、野菜、豆、芋、きのこ、海藻などを中心とした食生活にすることが大切です。心は目に見えないのでなかなか変えにくい部分です。がんは治ると信じて、自分が回復するイメージを持つことが大切です。目に見えない心を動かすには、何か今までと違った行動をしてみることも効果的です。森林浴、温泉、花やペットを育てる、がん患者のサークルに参加するなど何でも良いと思います。
漢方薬や健康食品を服用することも大変良い方法です。ライフスタイルや食事を改善した上で漢方薬や健康食品を服用して、がんは治るというイメージを持つことは心に良い影響を与えて、免疫力が高まります。以下で効果的な漢方薬、健康食品の服用法と食養生について解説します。
がん免疫を高めるためにはβ-グルカンなどの多糖類を多く含んだきのこ類が良いことが知られています。きのこには様々な種類があり、使う部位も子実体(かさの部分)、菌糸体、胞子に分けられます。菌糸体や胞子を使った製剤は子実体に比べて腸から吸収されやすいといわれています。
活性酸素は細胞を酸化させ傷をつけ発がんの原因の1つとなります。この酸化ストレスはがん細胞の増殖を促進させる方向に働きます。また活性酸素はリンパ球やマクロファージなどの免疫成分を酸化させて、効果を低下させることも問題になります。
活性酸素による血管の障害は漢方医学で言う淤血といえます。よって淤血を改善して血液を浄化することは抗酸化力を高め、がんの治療と予防において重要な意味を持ちます。また淤血を改善すると血液がさらさらになり、免疫細胞が血液の中を動きやすくなり、がん細胞まで行きやすくなるという効果もあります。
血液を浄化して活性酸素を抑える漢方薬は数多くあります。
がんは栄養を必要とするため、新しい血管を作って少しでも多くの栄養を摂取しようとします。血管新生を抑制することはがんの栄養源を断ち兵糧攻めにすることを意味しています。
この分野は西洋医学の抗がん剤や放射線の効果が強いと考えられますが、抗がん剤や放射線は免疫を低下させ活性酸素を体内で発生させるため、新たながん細胞を作る可能性があることが問題となります。また様々な重い副作用が問題となります。この分野でも一部の漢方薬が注目されています。
漢方薬はがんの部位や進行状況、体質などに合わせて服用すると、全身の機能や免疫力などを総合的に高めてがんの増殖抑制やQOLの改善など様々な効果が期待できます。漢方薬は抗がん剤や放射線の副作用の防止に有効であることが、中国では多くの論文で発表されています。
漢方薬は体質(証)にあわせて選択することができれば、大きな力を発揮することができます。
手術後やがん末期になると食欲も低下して体力も落ちます。全身の栄養状態が悪くなり免疫細胞の量も減ってきます。この状況になると免疫を刺激しても十分な効果が得られません。
漢方薬は体力を高めて栄養状態の改善に効果的です。
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