認知症とは、一度獲得した知的能力が脳の後天的な病的な変化により、著しく低下した状態です。症状が進むにつれて、判断力なども衰え、日常生活に支障をきたすようになります。認知症は脳が病的に障害されておこり、多くはアルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆に分けられます。日本では血管性痴呆の方がアルツハイマー型痴呆よりも多いといわれていましたが、最近ではアルツハイマー型痴呆の方が多いとの報告があります。アルツハイマー型痴呆は女性に多く、脳が病的に萎縮し、進行すると人格の崩壊が著しくなります。本人は病気だという自覚がないのが特徴です。症状としてはまずもの忘れがあげられます。最初は古い記憶は比較的保たれていますが、新しい出来事が覚えにくく、忘れやすいという特徴があります。また判断力の低下もみられ、さらに時間、場所、人物の判断がつかなくなります。脳血管性痴呆は脳の血管が詰まったり破れたりすることによってその部分の脳の働きが悪くなり、脳卒中の発作がおこるたびに段階的に悪化することが多いようです。症状としてはもの忘れ、頭痛、めまい、耳鳴り、しびれ等が見られます。障害された場所によって、ある能力は低下しているが別の能力は比較的大丈夫という様に、まだら状に低下し、記憶障害がひどくても人格や判断力は保たれていることが多いのが特徴です。
中国医学では脳は髄海といわれ、髄は腎より生じると考えられているため、認知症は腎虚がベースにあると考えています。さらに高齢により脾胃も弱くなり、運化が失調して痰濁が生じて脳竅を塞ぐことも多く見られます。また脳血管型痴呆の場合は淤血が脳竅の詰まることが大きな原因となります。治療としてはまず腎を強力に補います。
腎を補う効果が優れている海馬補腎丸、参茸補血丸、救精などが効果的です。胃腸が弱く脾虚がある人は六君子湯、補中益気湯、帰脾湯などを併用します。頭がもやもやして痰濁がある人は温胆湯や加味温胆湯などを併用します。脳梗塞や脳血流が悪く淤血体質がある人は冠元顆粒、イチョウ葉エキスなどを併用します。