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PHARMACY DIGEST 2016年10月号

“町の科学者”から“理想の健康サポート薬局”へ

薬局の使命全うするため、時代に合わせた変容を模索

今年で創業71年目を迎えた株式会社小島薬局(本社:静岡県沼津市)。保険薬局として多くの地域住民から処方箋を受ける一方で、漢方相談薬局という独自の分野も確立している。団塊の世代が後期高齢者となる「2025年」に向けて薬局の変容が求められているなか、地域の老舗・小島薬局はどのような展望を持っているのか。代表取締役社長・小島晃氏ならびに常務取締役・大石森一郎氏にお話を伺った。

相談業務は豊富なノウハウ蓄積 沼津地域にマッチした薬局を追求

──創業から長きにわたり、地域密着の姿勢を貫いてこられたそうですね。

小島 祖父が「相談薬局」というかたちで創業したのが1945(昭和20)年でした。当時は、病院も少なく国民皆保険もなかったので、皮膚疾患や胃腸のトラブルなど、不調があれば薬局に行った時代です。薬剤師はそういう困りごとを聞き、一人ひとりに合わせて薬の調合も行いました。また、医薬品だけでなく化粧品や洗剤、食品添加物など、身の回りのあらゆる化学物質についてアドバイスできる“町の科学者”でもありました。そして父も、そういう「よろず相談所」としての薬局を開業したわけです。  

株式会社小島薬局
代表取締役社長 小島晃氏(写真左)
同社常務取締役 大石森一郎氏(写真右)
▲昨年初めて開催した「健康フェア」のポスター。
 その後、医薬分業の波が来て、調剤部門を拡充させていくことになりました。私が父と一緒に働くようになったのはその頃です。といっても、私は漢方に興味を持っていたので、国際中医師の資格を取るなど、もっぱら「日本一の漢方相談薬局」を目指し取り組んでいました。社長業を継いだのは9年前です。社員を抱えているわけですから、漢方にばかり熱中していられなくなりまして(笑)、大石常務とともに保険薬局を展開するなど、経営に力を注いできました。
──そして現在、保険薬局7店舗と漢方相談薬局1店舗を運営するに至っているわけですね。
小島 弊社の保険調剤業務はICT化を進めながら高い質を保っていますが、漢方堂を中心に弊社の伝統である相談業務にも力を入れています。ですから、いま盛んに言われている「患者さんとのコミュニケーション」だとか「調剤だけでなく、住民の健康維持・増進への働きかけ」といったものには長年の経験があり、健康サポート薬局としてのノウハウは十分持っていると自負しています。
 しかしながら、「住民の健康を守る」という薬局の使命は変わらずとも、手法は時代に合わせ変えていかなければ受け入れてもらえません。地域医療が注目され、地域包括ケアシステムが始動するなか、この沼津という地にマッチした薬局とはいかなるものかを考えていく必要があります。大石常務の指揮の下に昨年始めた「健康フェア」(写真)も、そうした模索の1つです。

第1回小島薬局健康フェアの様子(2015年)

▲「健康チェック」コーナーはご覧のとおりの大盛況。

▲「薬局見学ツアー」では、処方箋受付から薬が渡されるまでの、全工程を開示して好評を博した。

▲小学生を対象にした「子供薬剤師体験」。体験後には「こども薬剤師認定証」(写真右)を授与して喜ばれた。
大石 小島薬局は、当地では比較的知られた薬局ですが、漢方堂以外は処方箋がないと入りづらいのは否めません。一方で、これからの時代は処方箋がなくても入れる店でなければいけないし、薬剤師は医薬品以外のテーマでもコミュニケートできなければいけない。──そう考えたとき、突破口として、小島薬局や薬剤師についてもっと知ってもらおうと、地域の人を呼んで「健康フェア」をやることになりました。
 広く一般の人と交流しようという試みは、社長が地域のカルチャースクールで講座を持つなど、こちらが出かけていって行うことはありましたが、薬局に来てもらうかたちをとったのは、この「健康フェア」が初めてです。準備には推進会議を立ち上げ、何度も会合を重ねました。プログラムは、たたき台こそ私がつくりましたが、推進会議メンバーみんなで話し合って決めていきました。
 当日は、120人ほどの住民が足を運んでくれました。プログラムはいろいろ用意しましたが、メインは糖尿病簡易検査と体脂肪や骨密度などを測る「健康チェック」です。地域の人に「今後、こうした簡易検査は薬局でもできるようになりますよ」ということをアピールするのがねらいです。
 そのほかには、「漢方講座」や子供を対象にした「子供薬剤師体験」など。好評だったのは、カウンター内の作業を見る「薬局見学ツアー」ですね。「健康フェア」は本店で開催したのですが、本店は処方箋応需枚数が月6,000枚前後、在庫も2,300種類以上にのぼる規模の大きな店舗です。そのぶん待ち時間も他店より長いわけで、患者さんはソファーに座って調剤室を眺めながら、「あの中では何をやっているのだろう」などと思っているわけです(笑)。実際、調剤室から聞こえてくる「カチャカチャ」という音の源を見学ツアーで目にし、「ああ、この音だったのか」と納得される方もいらっしゃいました。
 見学ツアーでは処方箋を受けてから薬をお出しするまでの全工程を開示しました。「調剤にはこれだけの手間暇がかかるのだ」と分かれば、待ち時間の苦痛も軽減されるでしょうし、何より患者さんの安心や信頼につながると思います。

来秋オープン予定の新店舗で健康サポート薬局の理想モデル目指す

小島 「健康フェア」のメインプログラムを簡易検査としたのは、今後、それが重要な薬局業務の1つになってくると思ったからです。
 厚労省の健康サポート薬局の概念には、「医療費を抑えるために、健康を自己管理してほしい。病気になった場合はいち早く受診してほしい。そのために薬局では簡易検査などを通し、必要な人に受診勧奨してほしい」ということがあります。たしかに、全国には薬局が約5万7,000軒、ドラッグストアを含めると約7万5,000軒もあるわけで、それらが一斉に取り組めば疾病の早期発見・早期治療が促進されます。
──簡易検査といっても、いろいろあります。貴社ではどのような検査を提供していくご予定ですか?
小島 そこは、まさに「考え中」です(笑)。真っ先に想起されるのは、自己血による血糖(HbA1c)、脂質のチェックですが、ほかにも体組成測定や血流測定、骨密度測定など人々の興味を引くさまざまな検査とそのための機器が登場してきています。住民のニーズを見ながら、最適な検査機器を選択するという作業を早急に行っていくつもりです。
 しかしながら、機器をそろえて検査するだけであれば、「ミニ診療所」に過ぎません。弊社が目指すのはそういう薬局ではありません。機器を活用しながら漢方医学の知見を生かして正しく見立てを行い、適切な「指導」を行って地域の健康をサポートする薬局です。
 具体的には、症状が軽い方は栄養学や薬膳の知識を生かした食事指導を行い、未病の段階で症状を軽減する。病院に行くまでもない機能的疾患の方は、漢方薬やサプリメントを活用して症状を改善する。そして器質的疾患が疑われる方は適切な医療機関を紹介する。このように患者さんの状態を正しく判断して、適切な対応を行うことができる薬剤師を育成していく――それが、弊社の健康サポート体制の方向性だろうと思っています。
 健康サポート薬局とは、住民に対して長いスパンのフォローを提供していく薬局であり、国もそうした機能を備えた薬局が各地にできるよう発破をかけています。ところが困ったことに、その具体的なモデルは示してくれませんし、手本となる薬局も、いまのところは見当たりません。
 そこで弊社では、「理想的な健康サポート薬局」を目指し、来秋、新店舗をオープンさせることにしました。弊社には調剤、漢方、相談業務、健康食品や栄養、在宅医療・介護など、あらゆる「素材」がそろっています。それらを総動員し、かつ融合させ、いままでにない薬局店舗をつくってみたい。先ほどの簡易検査についても、いまは「健康フェア」のプログラムとして行っていますが、新店舗には専用コーナーを設け、イベントではなく日常化していきたいと思っています。
──興味深い構想ですね。次回は、その新店舗についてもご紹介いただきたいと思います。

■株式会社小島薬局の概要■

1945(昭和20)年、地元住民の相談薬局として創業。小島晃氏の社長就任後は、「地域医療への貢献」を理念に掲げるなど、地域密着の姿勢をより鮮明にしている。現在、沼津市を中心に静岡県東部地域で保険薬局7店舗、漢方相談薬局1店舗を展開。社員数74人(うち薬剤師41人、管理栄養士2人、登録販売士15人)。
■本社所在地:〒410-0007 静岡県沼津市西沢田730
■URL:https://kojimayakkyoku.com/