お店の構造は奥に向かって細長く、入口近くはOTCと化粧品コーナー、中央部が漢方相談コーナー、いちばん奥が処方箋調剤室という配置で、小島晃先生のほかに常時5~7名の薬剤師と2~3名の事務員、店員さんが忙しく働いている。
小島晃先生は7年前、7期生として高円寺塾を卒業。その後3年間、北京中医薬大学日本分校(東京都文京区)に学び卒業、試験に合格して「中国政府認定国際中医師」の資格を得られた。日本中医薬研究会本部学術委員であり、高円寺塾同窓会の副会長でもある。今、あたかも日本中医薬研究会は会員の「国際中医師」資格獲得に力を入れている。
小島先生に”先駆者”として、これまで何をどう考えて国際中医師になられたのか、そしてその価値は?などといったことをお聞きした。会員各位のご参考にしたいという、販促委員会のタイムリーな考えによるものである。小島先生が話される。
私は学生時代(東京薬科大)、漢方にあまり興味がなく、せっかく大学に中医学の授業があったのに受けなかったのです。卒業後約3年間、新薬メーカーの営業をやった後、父の店で半年、調剤の仕事をやりました。調剤の仕事をしながら、これから40年か50年薬剤師としてどう生きていくべきかと考えている時に、父から高円寺塾へ入っては、というアドバイスを受けました。
父は「相談薬局」を旗印に掲げていましたが、特に漢方専門でというわけではありませんでした。ですが、その頃から「処方箋だってこの先何十年も食べていけるものなのか」という危機意識を持っていました。
そこで、塾そのものにはさほどの期待は持たないまま、「とにかく一年はやってみよう」という程度の気持ちで高円寺塾に入ったわけです。そして、目から鱗の落ちる一年となったわけです。
漢方と言えば、勘と経験と思っていた私に、塾で教えられる中医学の合理性は驚きでしたし、その合理性のために入りやすい学問でした。
高円寺塾での1年は、私が一生続けていく学問、中医学への入門と開眼をさせてくれました。
今、日本には、中医学を学ぼうとする者には、中国の複数の中医薬大学が日本に分校を作ったりしているので、入口はいくつかありますが、高円寺塾で学んだ者は伸びが早いはずです。理論と実践の両面から入れるし、講師陣が素晴らしいので、中医学入門には最高の塾だと思います。
卒業して実家に帰ってみると、近くの病院が処方筆を院外に出すようになっており、それなりの相談薬局だった父の店は、処方箋重点に様変わりしておりました。せっかく高円寺塾を出てきた私にとって、相談薬局としてはあまり良くない状況でしたが、ここで中医学の実践にとりかかる決意を固めました。
まわりを見渡すと、沼津は人口21万に過ぎないのに、5店も6店も漢方薬局があります。他店との違いをどう打ち出せばよいのか、と考えていた所、雑誌「中医臨床」や「東洋医学」に、北京中医薬大学日本分校の広告が載りました。広告の記事には、「国際中医師」になれる道や体験入学のことが書かれています。
さっそく体験入学をしてみると、担当してくれた中医師の先生の授業が大変レベルの高い内容でした。その先生は、北京中医薬大学の本校から来られているのだと知りました。私は、この学校ならと思い、「国際中医師」になって店の差別化に役立てようと考え、入学しました。そして、平成7年から10年にかけての3年間、月2回、土日を使って通学、卒業しました。
卒業後すぐの国際中医師の試験を受け、合格しました。現在まで37人のA級合格者がいますが、どういうわけか、医師、薬剤師というその道のプロが多くないことが残念です。
国際中医師の試験を受けた後、父が以前から付き合いのあった「沼津朝日」という新聞社に「国際中医師」受験のことを話しました。
この新聞が、私が試験に合格した時、顔写真入りでかなり大きく記事に取り上げてくれました。新聞を見てすぐに相談に来たという人は多くはありませんでしたが、「国際中医師」の記事は、漢方薬局としてのイメージの確立に大きな力になったと思います。
「国際中医師」は日本での資格はありませんが、私にとって大きな自信になりました。最近は漢方なら小島薬局と言われるようになってきました。
中医学を学ぼうとする方々に特に強調したいのは師匠を持て、ということです。私は高円寺塾で猪越先生をはじめ、素晴らしい先生方を師匠に持てました。店に立つようになってからは、寇華勝先生を師と仰いでいます。寇先生には月1回の店頭相談会、月2回ほど有志の勉強会で指導していただいています。寇華勝先生は現在日本にいる中医師の中でも最高レベルの実力を持つ先生です。優秀な中医師から直接学ぷことは、自分のレベルを高める大きな力になるものです。
いま、処方箋が月に4千枚近く来ますが、この仕事はいつ悪くなるか分からない、来年かもしれないと思いながらやっています。今のうちに中医学での評判をもっと高め、漢方部門をさらに充実させたいと思っています。